「認知症になったら、何もできなくなる」は本当?
2026/08/07――人生の間取りを狭くしないために
目次
- 鳥取市認知症フォーラムへ
- 「そうなる順番だから」と伝える医師
- 認知症の人は〇〇、という思い込み
- 認知症になっても、やりたいことはある
- 暮らしは「できないこと」ではなく「できること」から整える
- 50代から知っておきたい「親のため」と「自分のため」
- 人生の間取りを狭くしない
鳥取市認知症フォーラムへ
8月7日、鳥取市で開催された「認知症フォーラム2026」に参加してきました。
定員200人と聞いていたので、「そこそこ広い会場なのかな」と思っていたら、
なんと椅子を増席するほどの大盛況。
当日参加の方も受け入れていたようで、会場はほぼ満席でした。
普段お世話になっている市民後見人の仲間の顔もたくさん見かけ、
「認知症」というテーマが、決して一部の人だけの問題ではないことを改めて感じます。
最初は、鳥取市認知症本人「希望大使」の任命式。
今回任命された若年性認知症の当事者の方が、
とても前向きに挨拶されていたのが印象に残りました。
鳥取市は「認知症になってからも自分らしく暮らし続けることができるまち」を目指しており、
「誰でも認知症になりえる時代だから」と伝える医師
第一部では、三豊市立西香川病院の院長で、
認知症疾患医療センター長でもある大塚智丈先生の講演がありました。
臨床の現場で実際に患者さんや家族と向き合っているからこその、
具体的なお話がたくさんありました。
中でも印象に残ったのが、認知症に対する「昔からのイメージ」の話です。
かつてベストセラーになった『恍惚の人』などで描かれた認知症のイメージが、
その当時を知る世代の中に強く残っている。
そのため、
「認知症になったら家族に迷惑をかける」
「何も分からなくなる」
「何もできなくなる」
というイメージが、認知症を受け入れることを難しくしているというお話でした。
そこで大塚先生は、認知症の患者さんとその妻に対して、
「奥さん、将来誰もが認知症になりえる時代ですから
自分がなったときも同じようにしてもらえるように
お子さんに見本をみせてあげてください」
という趣旨の言葉をかけるそうです。
説明の後、「もうくよくよしません」と前向きな言葉へ。
認知症は「特別な誰かに起こること」ではありません。
厚生労働省の2022年の調査によると
日本における65歳以上の高齢者の認知症の有病率は全体で12.3%。約8人に1人。
年齢が上がるにつれて有病率は急激に高くなり、80歳代後半では約33%、90歳以上では約50%を超えます。
だったら、「もしなったらどうしよう」と怖がるだけではなく、
なっても暮らしていけるように、今から知っておく。
「認知症の人は〇〇」という思い込み
後半は、講師の大塚先生と「希望大使」の皆さんとの座談会でした。
そこで、今回新たに希望大使になった田村さんが、
初めて認知症カフェに参加したときのことを話してくださいました。
そこで令和元年から希望大使として活動されていた藤田さんと初めて話したとき、
「この人が認知症のはずがない」と思ったそうです。
この言葉を聞いて、私は少し考えました。
「認知症の人は〇〇だ」という感覚があった。
- 認知症になったら会話ができない。
- 認知症になったら外出できない。
- 認知症になったら趣味も楽しめない。
- 認知症になったら、家族が全部やってあげなければならない
というイメージを、私たちは知らず知らずのうちに持っているのではないでしょうか。
でも、実際にはそうとは限りません。
認知機能に少し難しさがあっても、日常生活を送ることはできます。
多少の支障があったとしても、
「できること」
「やれること」
「やりたいこと」は、まだまだたくさんある。
田村さんは現在60歳。
57歳のとき若年性アルツハイマー病と診断され
診断後は認知症本人ミーティングに積極的に参画されています。
今は介護職員初任者研修を受講修了、認知症になっても新しいことに前向きに挑戦されています。
認知症になっても、やりたいことはある
ここで、私は自分の仕事について考えました。
私はライフオーガナイザーとして、暮らし全体を俯瞰して、
その人に合った仕組みを一緒に考える仕事をしています。
片づけというと、
「モノを減らす」
「収納をきれいにする」
というイメージを持たれがちですが、本当に大切なのは、その先です。
その人が、どう暮らしたいのか。
そこから逆算して、環境や仕組みを整えていきます。
これは認知症になった人の暮らしにも、きっと活かせる。
たとえば、
- 忘れやすいなら、目につく場所に置く
- 探すのが難しくなったら、定位置を分かりやすくする
- 手順が複雑なら、工程を減らす
- 苦手な作業は、道具や仕組みで補う
- 外出したいなら、安全に出かけられる方法を考える
- 好きなことがあるなら、それを続けられる環境をつくる
「できなくなったから、やめる」だけではなく、
「どうすれば、まだできる?」と考えてみる。
ここには、ライフオーガナイザーが関われる可能性がたくさんあると感じました。
暮らしは「できないこと」ではなく「できること」から整える
そして、これは認知症になった本人だけの話ではありません。
親が70代、80代になってくると、50代の子世代は、
「最近、母の物忘れが増えた気がする」
「実家の片づけをしたほうがいいのかな」
「一人暮らしを続けられるのかな」と、いろいろな心配が出てきます。
でも、心配だからといって、いきなり
「危ないから、これを捨てよう」
「もう一人暮らしは無理じゃない?」
「施設を探したほうがいい」
と、「できないこと」を中心に考えてしまうと、本人の暮らしの選択肢を狭めてしまうことがあります。
そこで、ちょっと視点を変えてみる。
「今、何ができている?」
「何が好き?」
「これからも続けたいことは何?」
そして、
「それを続けるために、環境をどう変えればいい?」と考えてみる。
これは、実家の片づけを考えるときにも、とても大切な視点だと思います。
50代から知っておきたい「親のため」と「自分のため」
親のことが心配になる50代。
でも、そこで忘れてほしくないのが、自分自身の人生も同時進行しているということです。
親の家を心配するあまり、
「いつか親のことが落ち着いたら旅行に行こう」
「介護が終わったら、好きなことをしよう」
「実家を片づけ終わったら、自分の家も整えよう」と、つい自分の人生を後回しにしていませんか?
でも、親の暮らしと自分の暮らしは、別々に存在しています。
だからこそ、
親の人生の間取りを整えることと、自分の人生の間取りを整えること。
両方を考えていいのです。
たとえば、認知症について学ぶこともそう。
「親が認知症になったときのため」というだけではありません。
自分自身も、将来認知症になる可能性があります。
だから、「親のために勉強する」から、
「自分も含めて、これからの暮らし方を知っておく」に変えてみる。
そうすると、少し見え方が変わってきます。
人生の間取りを狭くしない
今回のフォーラムで、私が一番強く感じたのは、
「認知症になったら、人生の間取りを狭くしなくてもいい」ということでした。
もちろん、できなくなることはあります。
工夫が必要になることもあります。
誰かのサポートが必要になることもあります。
でも、
「できないことが増える=人生が終わる」ではありません。
暮らし方を変えればできることもある。
道具を使えばできることもある。
人の手を借りればできることもある。
環境を変えれば続けられることもある。
そして、それを一緒に考えるのが、ライフオーガナイズの得意なところでもあります。
私は「片づけ」を、モノをきれいに並べることだけだとは考えていません。
その人がこれから何をしたいのか。
どんな毎日を送りたいのか。
そこから暮らしを組み立て直すこと。
それが、ライフオーガナイズだと思っています。
そして、これは50代からの自分自身にも使える考え方です。
「親のことが心配だから」と、自分の人生をいったん脇に置く必要はありません。
親の暮らしを考えながら、自分も旅行に行く。
好きなものを買う。
行きたかった場所に行く。
新しいことを学ぶ。
友達と笑う。
これからの人生に、まだまだ「やりたいこと」を入れていく。
人生の間取りは、まだ変更できます。
しかも、リフォーム代はかかるかもしれませんが、間取り変更の許可申請は必要ありません。
「親のこれから」と「私のこれから」。
どちらもあきらめずに、ちょうどいい暮らし方を一緒に考えていきたいと思った、今回のフォーラムでした。